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ふうてんろうじんにっき
瘋癲老人日記
谷崎 潤一郎
Read 瘋癲老人日記 (ふうてんろうじんにっき) by 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 98,490 characters · 196 screens
城山五子手記抜萃
七日 晴れたり曇ったり
軽快退院。今日は二月としては珍らしく暖い日である。寒いのは禁物だから、昼からの一番暖い時を選んで暖房車で送る。卯木氏の家では主人の書斎を大きなストーブで暖めていると云うことである。
城山五子手記抜萃
去年十一月二十日に脳血管の痙攣で倒れた父は、その後間もなく狭心症、心筋梗塞を患い、同年十二月十五日東大病院に入院したが、勝海先生のお蔭で辛うじて危険状態を脱し、本年二月七日五十日餘で退院することが出来、狸穴の宅に帰った。しかし狭心症は全く治癒した訳ではなく、その後も時々軽い発作があり、今になっても折々ニトログリセリンの厄介になっている。そして二月から三月一杯寝室から一歩も出たことはなかった。佐々木看護婦は父の入院中も卯木家にいて母の看護に当っていたが、父が退院すると又父の係となって、三度の食事から大小便の世話をしたが、時々お静も手伝っていた。
私は京都の家にいても近頃はこれと云う用事もないので、一カ月の半ばは狸穴で暮し、佐々木看護婦に代って母の病床に侍った。父は私の顔を見ると御機嫌が悪いので、なるべく父に見られないようにした。その点は陸子も私と同じである。