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しろいあさ
白い朝
豊島 与志雄
Read 白い朝 (しろいあさ) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,920 characters · 35 screens
へんに黙りがちな、沈みこんだ食事です。たしかに、駒井さんは、ふだんのにこやかさを失っています。
それに、食事の間に、三度ばかり電話がかかりました。「ご主人はいつ頃お帰りでしょうか、どこに行ってらっしゃるのでしょうか……。」そういう電話で、先方の名前は仰言いません、と女中が取次ぎます。だから、秘書格の駒井さんは、そのつど、立ってゆきます。電話室から戻ってくると、苛立ってるのを無理に押し隠してる様子なのです。そして葡萄酒を、自分でものみ、正夫にもすすめます。
九時頃でしょうか、思いがけなく、ざあーっと雨がきました。
駒井さんの室で、二人はトランプをしてあそんでいました。占いめくりのやりっこや、子供らしいゲームです。
雨はますますはげしくなります。時々稲光りがぱっときます。何もかも押し潰すような雨音と、何もかも貫き通すような閃光とは、人の心を躍らせます。正夫と駒井さんとは、顔を見合わせながら、戸外に気をとられました。
もうこれ以上ひどくはなれそうもない、その絶頂の豪雨が、そのまま勢をもち続けています。縁側に立っていって、硝子戸をあけて眺めると、一面にまっ白なしぶきです。