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しろへびのし
白蛇の死
海野 十三
Read 白蛇の死 (しろへびのし) by 海野 十三 (うんのじゅうざ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,881 characters · 24 screens
浅草寺の十二時の鐘の音を聞いたのはもう半時前の事、春の夜は闌けて甘く悩しく睡っていた。ただ一つ濃い闇を四角に仕切ってポカッと起きているのは、厚い煉瓦塀をくりぬいた変電所の窓で、内部には瓦斯タンクの群像のような油入変圧器が、ウウウーンと単調な音を立てていた。真白な大理石の配電盤がパイロット・ランプの赤や青の光を浮べて冷たく一列に並んでいた片隅には、一台の卓子がポツンと置かれて、その上に細い数字を書きこんだ送電日記表の大きな紙と、鉛筆が一本無雑作に投げ出されていたが、然し当直技手の姿は何処にも見えなかった。
今、全く人気の無いこの大きい酒倉のような変電所の中では、ただ機械だけが悪魔の心臓のように生きているのであった。
スパーッ!
リンリンリンリン。
突然白け切った夜の静寂を破って、けたたましい音響が迸る。毒々しい青緑色の稲妻が天井裏にまで飛びあがった。――電路遮断器が働いて切断したのだった。
と、思い掛けぬ窓のかげから素早く一人の男が飛び出して、配電盤の前へ駈けつけた。彼は慣れ切っている正確な手附きで、抵抗器の把手をクルクルと廻すと、ガチャリと大きな音を立てて再び電路遮断器を入れた。