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しろがねのえず
白金之絵図
泉 鏡花
Read 白金之絵図 (しろがねのえず) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 23,356 characters · 47 screens
」
「ははあいかにもの。」
と、飲んだ茶と一緒に、したたか感心して、
「これぞ、自然なる要害、樹の根の乱杭、枝葉の逆茂木とある……広大な空地じゃな。」
「隠居さん、一つお買いなすっちゃどうです。」
と唐突に云った。土方体の半纏着が一人、床几は奥にも空いたのに、婆さんの居る腰掛を小楯に踞んで、梨の皮を剥いていたのが、ぺろりと、白い横銜えに声を掛ける。
真顔に、熟と肩を細く、膝頭に手を置いて、
「滅相もない事を。老人若い時に覚えがあります。今とてもじゃ、足腰が丈夫ならば、飛脚なと致いて通ってみたい。ああ、それもならず……」
と思入ったらしく歎息したので、成程、服装とても秋日和の遊びと見えぬ。この老人の用ありそうな身過ぎのため、と見て取ると、半纏着は気を打って、悄気た顔をして、剥いて落した梨の皮をくるくると指に巻いて、つまらなく笑いながら、
「ははは、野原や、山路のような事を言ってなさらあ、ははは。」
「いやいや、まるで方角の知れぬ奥山へでも入ったようじゃ。昼日中提灯でも松明でも点けたらばと思う気がします。」
がっくりと俯向いて、
「頭ばかりは光れども……」
つるりと撫でた手、頸の窪。