Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ひゃくしょうのゆめ
百姓の夢
小川 未明
Read 百姓の夢 (ひゃくしょうのゆめ) by 小川 未明 (おがわみめい) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.
N3 · intermediate · modern kanji and kana · 7,278 characters · 15 screens
あの年とった博労のいったのはほんとうのことだ。いま、この寒さに向かって、他人の手に渡すのはかわいそうだ。」
こう思うと、百姓は、振り向いて、後ろから黙ってついてくる黒い牛を見て、かわいそうに思いました。牛の脊中にも、冷たい白い雪がかかっていました。
「来年の春までは置いてやるぞ。だが、今夜この野原でふたりが凍え死にをしてしまえば、それまでだ。俺は、もう、もう一足も歩けない。おまえは道がわかっているのか? たびたびこの道を通ったこともあるから、もしおまえにわかったなら、どうか俺を乗せて、家までつれていってくれないか?」
百姓は、牛に頼みました。
彼は、最後に牛の助けを借りるよりほかに、どうすることもできなかったのであります。
牛は、百姓を乗せて、暗い道をはうように雪の降る中を歩いていきました。夜が更けてから、牛は、我が家の門口にきて止まりました。百姓は、はじめて生きた心地がして、明るい暖かな家の内に入ることができたのでした。
百姓は、その晩、牛にはいつもよりかたくさんにまぐさをやりました。自分も酒を飲んで、床の中に入って眠りました。
明くる日になると、もう、百姓は、昨夜の苦しかったことなどは忘れてしまいました。