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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
Read 石狩川 (いしかりがわ) by 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 253,535 characters · 506 screens
「それで」と阿賀妻は刀のさげ緒を弄び、ちッと舌を鳴らして云った、「貴殿らがその代表に頼まれて見えられたというわけか」
「いいえ、そういうわけではありませんが――」
「と云うと?」
「われらの立場として代弁せずにはおられませんものあって――」
「それは上出来、それならば大事ない――」と阿賀妻は深い眼をぱちぱちと瞬き、溜息とともに吐きだした。「やはり、予定の通りに行動いたしましょう、さよう、こういう時世ですから、土民となるためにも苦しまねばなりません、それ、秋たけた野にさまよう羽虫が、次の季節によみがえろうとするためには、今は一刻もはやく地に潜まなければ」
彼は手首で鼻をこすった。
「――――」
安倍誠之助はながい上体をおしのばして耳に掌をあてた。よく聞き取れなかった、――というより、訊きなおさなければ解からない呟くような言葉であった。
「あのときの、われら、何と云いました――一蓮托生と云いました、な」
「しかし、阿賀妻さん」
「はい」と彼は弱々しく答え、しかし目をみはって相手を眺めた。その顔が次第にこわばっていた。抜きうちを喰わされたような咄嗟の駭きであった。阿賀妻には茶飯事のこのことが安倍誠之助を気色ばましていた。