Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
Read 石狩川 (いしかりがわ) by 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 253,535 characters · 506 screens
それはメリケンでありエギレスであると云われた。更にその手前の海では、潮の流れがオロシャに通じていると云われた。その見も知らぬ土地の人間が、漂流者の交換や交易の要求をひっさげて来て、やがて大名の没落となった。その一人が、取りも直さず彼自身であった。彼は懐紙をだして顔ににじんだ脂汗を拭いた。瞼をおさえた。影のように寄りそっている従僕に、海を見ながら命じた。
「主事どのを呼んでまいれ」
彼は気持の支柱がほしかった。それが阿賀妻であった。その男が、ただそこに黙ってつっ立っているだけでもよかった。
阿賀妻は刀をかかえて袴のすそを踏み踏み近づいて来た。静かなようでも船はやっぱり揺れていた。痩せた中背の男には、動揺がほかのものより一層はげしく感じるのであろう。それとも彼は性来の船負けであったかも知れぬ。船に乗ったこの数日のあいだ、大部分を、彼は毛布にくるまって寝ていた。うつらうつらと時を過した。いくらか塩けのある船の食事を健啖に平げて、つまり、はじめて――、数年ぶりの休息を取りもどしていたのである。
「どうじゃ?」そう慰めようとするその邦夷より先に、阿賀妻は云った。