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いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
Read 石狩川 (いしかりがわ) by 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 253,535 characters · 506 screens
「県吏どもの申告が!」
阿賀妻はそう吐きだした。しかし、さすがに、それを大ごえで主張する勇気は無かった。自分の胸が事の真相をいちばん悉しく知っているのだ。腕を組んでみた。が、しばらく彼は窮鼠のかたちであった。眼を光らせて、前にならんだ官員の顔をじろじろながめていた。
堀は報告に読みふけっていた。
「しかし――」と、遂に阿賀妻はごくりと唾をのみこんで云った、「開拓は開拓使の使命でござろうが」
誰も何とも答えなかった。
「われら、開拓を致しておらぬとは云わせぬのじゃ」と附け足した。
なぜか言葉が上ずって来た。
「されば、われらの一団百五十名のものは、開拓使と共に生き得るものと、今日の今日まで信じていました、開拓使のみが、この誠意を知る友と感じていました、しかし、そうではなかった――と、すれば、よろしい、ご趣旨の通りお伝え致そう――」
「そのことなれば、阿賀妻さん」堀は小さな眼で相手の胸もとを睨みつけていた、「いくらも方法はあります」と、彼は反対に余裕をもってつづけた、「方法を考えることも出来ます、とにかく、ごたごたと、つまらぬ面目にかかずらっている時代じゃありません、――なに、もうそんな時刻か、身どもは行かねばなりません、いずれ後刻」