Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
いしかりがわ
石狩川
本庄 陸男
Read 石狩川 (いしかりがわ) by 本庄 陸男 (ほんじょうむつお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 253,535 characters · 506 screens
主婦は起きだして板戸をおし開けた。
「まア!」
駭きと寒けがさッと流れこんだ。
男らは自分の土地の伐木に出かけていた。そのトウベツの地はどうであろう。雪の朝の静かな清浄さは、あるいは男たちを見とおすことが出来るかも知れない。――そう思う、と女の目に火がつくのだ。彼女は雪掻きをつかんで戸口にせまった。
「家が埋まっとる」
彼女は反射的に自分の男を考えた。
明り取りの障子窓は月夜よりも暗かった。ここも雪が降り積っていたのである。小屋は埋没した。休みなしに降りつづけた雪は、一夜のうちに地表を数尺たかめていた。彼らの低い仮小屋はその下に沈んでしまった。留守をまもる女は、その底の戸口から空に向って穴を穿つのである。そして、一足々々上に匐いあがって行った。もんぺを着け、藁ぐつを履き、みだれる髪の毛を手拭いでうしろに縛りあげていた。蟹のように穴から顔を出す。空は紺青に晴れあがっていた。雪粒がぎらぎら輝いていた。その――、たよりないほど明るい野を、腿まで雪にぬかって見まわすのである。むろん、男のいるトウベツが見えるわけではなかった。大雪におどろいた留守居のものが、それぞれ自分の小屋を掘りだしていた。