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ふくざわゆきち
福沢諭吉
高山 毅
Read 福沢諭吉 (ふくざわゆきち) by 高山 毅 (たかやまつよし) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 54,555 characters · 109 screens
(わるいやつがでてこなければよいが。)
と、おもわず、刀のつかをにぎっていることもありました。足をひきずりながら、やっとの思いで大阪の兄さんのところにたどりついたのは、夜の十時すぎでした。
兄さんは、たいへんおどろきましたが、くわしいわけをきくと、
「そうだったのか、よくわかった。だが、長崎からここにくるには、中津によってくるのが道のじゅんというものだ。それを、おまえはお母さんのおられる中津をよけてきた。まあ、わたしがここにいなければともかく、おまえとここで顔をあわせながら、このまま江戸へいかせたとあっては、まるで兄弟がぐるになってやったようで、お母さんにもうしわけないではないか。お母さんは、それほどにはおもわれないかもしれないが、どうしてもわたしの気がすまない。江戸へいかなくとも、大阪にだって、よい先生がありそうなものだ。そのことをかんがえてみてくれ。が、今夜は、おまえはつかれているだろうから、ゆっくりやすんだらよかろう。」
と、やさしくいたわってくれました。
諭吉は、かぞえ年で三つのときに、中津へかえり、こんど十八、九年ぶりで、大阪へきたのですが、くらやしきのまわりには、まだ諭吉のことをおぼえているものがたくさんありました。