Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しほんたいへいき
私本太平記(四)
吉川 英治
Read 私本太平記(四) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 229,324 characters · 458 screens
「どうも親分、ヘンに他人行儀をいって、申しわけございません」
「お役目の途中じゃ仕方がねえ。……だが権三、今日はひょんな所で出会ったな。別れて三年ぶりだろ」
「まったく、びっくりしましたぜ、あの高札場の人込みで、ひょいと、お見かけしたときは」
「おれだって、ぎょッとしたよ。たしかその三年前か、木菟の権三は、水分の雨乞い祭りの晩、神社の石だんの下で、喧嘩相手にたたきつけられ、血ヘドを吐いて死んだなんてえ噂も聞いてたもんだからな」
「そいつあ、親分も同じですぜ。忍ノ大蔵がまだ生きてこの世の辻を歩いているなんて聞かせても、六波羅中たれひとり、まにうける者はねえでしょう」
「はははは。するとおたがいは、亡者だな」
「いったい親分はどうなすったんです。……あれは先おととしの元徳二年の三月でしたぜ」
「そうだ、山伏の八荒坊と姿を変えて、日野俊基のあとをつけまわし、高野街道から紀伊見峠のあいだまでは、たしかにおれも、忍ノ大蔵でいたわけだが」
「それから先は」
「いやはや、面目ねえ。ま、もすこし飲るから、その上で聞いてくれ」
なるほど今日の大蔵は山伏でもない。半袖、半袴、泥脚絆。