Japanese reading practice

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しほんたいへいき

私本太平記(四)

吉川 英治

Read 私本太平記(四) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 229,324 characters · 458 screens

Aozora Bunko

「あなたは、味方だ」

と、いや味な笑い方をして、彼はまた、

「お耳を」

彼女の横顔へ、身をズリ寄せた。

「いずれは、一断に御処分し奉ることになろうが、ずいぶんズバズバ物を仰っしゃるみかどだ。もっといろんな秘事を聞きおきたい。よいかの、お伽よりも目あてはそれだ」

「わかっています」

小宰相は、あわてて彼のたまらない口臭の熱気から身を離して。

「みかどのお命をちぢめよとは、たれのいいつけなのですか」

「もとより鎌倉の秘命だが、まださいごの一令は言って来ぬ。とかく煮えきらぬ判官殿が、また妻に邪げられでもしているものやら、いや焦立たしいことではある」

「…………」

小宰相の唇が白っぽく息をのんだ。その眸の奥もよく見ずに、能登はなお吐ざきちらした。

「むごいとでも思うのか。いや、あのみかどは、もうそれも感づいておる。だからいいおきたいことも今ならいうに相違ない。……といっても、あなたからは触れぬがいいぞ。みかどはすごく炯眼だ、怪しまれる」

だいぶ話し込んだと自分でも気がついてか、能登は、やっと縁先を離れかけて。

「小宰相どの。男と女というものはまたべつだ。木乃伊取りが木乃伊になるようなことはよもおざるまいな」