Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんのしゅっぱつ

秦の出発

豊島 与志雄

Read 秦の出発 (しんのしゅっぱつ) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 14,532 characters · 29 screens

Aozora Bunko

身体がひどく違和の感じだった。

楊さんに援けられてベッドに就いた。

楊さんは張浩の時の予兆も知っていただけに、少しく慌てたのである。私もそれを聞いて、ちと肌寒い思いをした。

然し、今になってみると、この時の丹永の霊感は何を指示するものだったか明かでない。仲毅生が耳を削がれたのはその前日のことであったし、また、その翌々日には彼女自身が喀血した。

夕景にはまだ少し間がある頃、秦啓源から私のところへ電話がかかってきた。――一緒に飯でも食べたいからこちらに来てくれないか、というのだ。

元気な声だった。薄曇りの空が晴れたような安心を私は覚えた。

彼はパレス・ホテルに一室を取っていて、大西路の家とまあ半々の生活をしていた。謂わば大西路の方は私邸であり隠棲であり、パレスの方は公館であり事務所であった。

私のところからパレスまでは近い。私が行くと、彼は電話で知らせた通り、階下の広間でお茶を飲んでいた。陳振東が同卓にいた。用談を済ましたところらしかった。

彼はパレスにいる時としては珍らしく、支那服を着こんでいた。顔には清新な色合があった。平素、彼の頬の皮膚にはなんだか血色のうすい荒みが漂っていて、一種の心身の消耗を思わせるものがあったが、それが冷水で洗い落されたような工合であり、澄んだ深い眼差しと秀でた鼻筋とがしっとりと