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こうようさんじんといちようじょし

紅葉山人と一葉女史

宮本 百合子

Read 紅葉山人と一葉女史 (こうようさんじんといちようじょし) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,362 characters · 5 screens

Aozora Bunko

今まで、紅葉山人の全集をすっかり読んだ事がなかった。

こないだ叔父の処へ行って二冊ばかり借りて来て、初めて、四つ五つとつづけて読んで居る内にフト気づいた事がある。

それは、一葉全集をよんで感じたと同じ事である。

いかにも立派な筆を持って居られた、と云う事は両方を見て等しく感じる事である。

筆をつけて居る時の苦心の名残は、つゆほどもなく、スラスラと、江戸前のパリパリの筆の運びには、感歎のほかはないのである。

よくこう筆が動いたものだ。

読んだものの、誰れでもが感じる、正直な、幾年たっても変らない感じである。

けれ共、私には、三つ一時につづけて読む事は出来ない、何となしもたれる。

どう云うわけだろう。

一葉全集を読んだ時も、そうであった。

紅葉全集をよんでもそうである。

それは、材料があんまり、同じ様だからと云う事から来るのでは有るまいか。

勿論上下、貴賤、貧富の差はあっても、同じ様に男女関係を骨子としてある。

そのなりゆきを序す筆の達者さ、巧な人物の描写法、活用法に一つ一つ独立させて、異った時に読めばあきる事をしらないのである。

いかにも、上手に書かれてあると思う。