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ささめゆき
細雪
谷崎 潤一郎
Read 細雪 (ささめゆき) by 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 194,628 characters · 371 screens
それでも信仰心が篤くて、毎月廿六日には欠かさず阪急沿線の清荒神へ参詣したこと。又百二十八社巡りと云って、住吉、生玉、高津の三社とその末社とへ月詣りをしたこと。節分には上町の寺々の地蔵巡りをして、自分の歳の数だけ餅を供えて廻ったこと。稽古は熱心で、要所々々の心持を丁寧に教えたが、「汐汲」の、「君にや誰かつげの櫛、さし来る汐を汲もうよ汲み分けて」のところなどやかましく云って、「月は一つ影は二つ」で桶の中に月のある思いをせよと云ったこと。「鉄輪」の「今更さこそ悔しかるらめ、さて懲りや思い知れ」と金槌で釘を打ち付ける様をする時は、腰を折って執心する眼に注意するようにと教えたこと。万事に旧弊で退嬰的な人ではあったが、近来上方舞が時勢に取り残されて行くのを見ては流石にじっとしていられず、機会があれば東京へ打って出ようと云う考が動いていたこと。まだ御当人は死ぬなどとは思わず、本卦還りの歳になったら南の演舞場を借りて花々しい会を催すのだと云っていたことなど。………尤も妙子は、わりに新しく入門した弟子で、ようよう近年おさく師匠と親しくなったに過ぎないので、人々の話を幸子と二人で慎ましく聴いていただけであったが、それにしては師匠も特別に眼をかけてくれ、自分もいつかは名取にして貰おうと云う下心がないでもなかったのに、今はその