Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜつえんたい
絶縁体
豊島 与志雄
Read 絶縁体 (ぜつえんたい) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 18,752 characters · 38 screens
スケッチブックを突っ込んだ竹籠を肩にかけ、太い杖をわきに置き、杖のそばには瓢箪が一つ転がっていた。見馴れないその瓢箪が、なんだか薄くなったような長髪と共に、妙にうらぶれた印象を私に与えた。
私は歩み寄って、遠慮なく声をかけた。
「あなたの持ち物に、瓢箪が一つ殖えましたね。」
市木さんは私の方を仰ぎ見て、半端な笑みを浮べた。
「酒がはいってる時は可愛いが、酒がなくなるとつまらなくなりますなあ。」
私はなんとなくそこに屈みこんだ。焼跡の草原で、コンクリートや煉瓦の破片がごろごろしていた。
西空には低く、真黒な雲が重畳していて、その上縁がぎらぎら輝き、その少し上方の深い青空に、太陽がぽかりと浮き出し、銀盆となってぐるぐる回転していた。太陽の方が雲に没するか、雲の方が太陽を覆い隠すか、どちらになるとも分らない状況で、見ていると眼が昏みそうだった。
「スケッチなさらないのですか。」
「いや、とても。」
それきり言葉は途切れた。雲の方がだんだん低くなり、太陽との間が大きくなってゆくようだった。
暫くたってから、市木さんはふいに言いだした。
「へんなことを思い出しましたよ。