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えんむすび
縁結び
泉 鏡花
Read 縁結び (えんむすび) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 16,536 characters · 33 screens
烏帽子素袍大紋じゃ。手には小手、脚にはすねあてをしているわ……大森彦七じゃ。南無妙、」
と豊かに目を瞑って、鼻の下を長くしたが、
「山頬の細道を、直様に通るに、年の程十七八計なる女房の、赤き袴に、柳裏の五衣着て、鬢深く鍛ぎたるが、南無妙。
山の端の月に映じて、ただ独り彳みたり。……これからよ、南無妙。
女ちと打笑うて、嬉しや候。さらば御桟敷へ参り候わんと云いて、跡に付きてぞ歩みける。羅綺にだも不勝姿、誠に物痛しく、まだ一足も土をば不蹈人よと覚えて、南無妙。
彦七不怺、余に露も深く候えば、あれまで負進せ候わんとて、前に跪きたれば、女房すこしも不辞、便のう、いかにかと云いながら、やがて後にぞ靠りける、南無妙。
白玉か何ぞと問いし古えも、かくやと思知れつつ、嵐のつてに散花の、袖に懸るよりも軽やかに、梅花の匂なつかしく、蹈足もたどたどしく、心も空に浮れつつ、半町ばかり歩みけるが、南無妙。
月すこし暗かりける処にて、南無妙、さしも厳しかりけるこの女房、南無妙。」
といいいい額堂を出ると、雨に濡らすまいと思ったか、数珠を取って。頂いて懐へ入れたが、身体は平気で、石段、てく、てく。