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せんさいなびのかんしょうということについて
繊細な美の観賞と云う事について
宮本 百合子
Read 繊細な美の観賞と云う事について (せんさいなびのかんしょうということについて) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,663 characters · 6 screens
私は誰はばかる事なく世の中の人すべてに云う事が出来る。
人の血を見る事を恐れず明暮れを只争闘と罪悪に暮して悔ゆる所のない哀れな不具な心を持ったものどもでも、一度若しこの美くしさをしみじみと感じたならば、悔いと安心の涙にむせびながら尊い美を感謝するに違いない――――と。
私は神をないものとは思わないながらもそれを信じて毎日毎日祈る事は出来ない、けれ共この美にささげる私の祈りは私が死ぬるその時までつづく長いものである。
熱心な信者が聖母の御像を拝するだけで自らの行手に輝く光明を見出すと同じに、私はこの美によってすべての事を感じ思わされるのである。
私はこの美にふれた時に我からはなれた我の中に生き、幼子の様なすなおな気持になる事が出来るのだ。
誰に言葉をかけられても快く返事が出来、開いた心地で笑う事が出来る様にして呉れるのだ。
私は心からこの美を讚美する。
そして又地球が滅びてもなお此ればっかりは滅びると云う事を知らないで輝いて居るものである事を信じる。
美はどこの暗い中にでも冷っこい隅にでもあるものだ、その普通の美よりももっと尊い美がより沢山ある事を若し思わない人が多くあったとしたらそれ等の人は自然から受くべき嬉びの半ばほか感じて居ない人達である。