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おうがいのけんこうとし
耄碌寸前
森 於菟
Read 耄碌寸前 (おうがいのけんこうとし) by 森 於菟 (もりおと) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 43,925 characters · 89 screens
父の買い入れた土地には初めから、三間と台所から成っている古びた小さい板葺の平家とその北端に離れて土蔵一棟があった。父の家族は狭いながら一応この家に入り、その後に平家の後方の長屋二軒と梅林とを買い入れ、ここに二階建の観潮楼を建てたので、その落成は明治二十五年八月十日、これらのことは父の「観潮楼日記」に明記してある。家の構想は私の祖母峰子のかねての案を基として、千住の大工山岸音次郎が建て、造園一切は藪下道にあった柴田千樹園主が世話をした。この家の外囲いから間取りの事その他、叔父森潤三郎の著『鴎外森林太郎』に精しく、私も部分的ながらたびたびくり返しているため、今は詳述を避けるが、階下は三畳の玄関、六畳の居間兼書斎、四畳半の茶室、八畳の洋室の応接室、二階は十二畳の一間である。この二階から見ると東南方の崖下当時はほとんど畠と水田でその向うに上野と谷中の森を望み、木立の間から左に谷中天王寺、右に上野寛永寺の五重塔の九輪が見えた。上野の山の端と、さらに右方向ヶ丘の高台との間は低地が開けて人家の屋根で埋まり、そのはるか向うに品川沖の白帆が見えるというので、団子坂は一名潮見坂といい、この楼の名の観潮楼もこれによったのであった。