Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はなもかたなも
花も刀も
山本 周五郎
Read 花も刀も (はなもかたなも) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 89,364 characters · 178 screens
なりわい
一
「拾ってってくれる、――」
幹太郎は震えながら反問した。
長と呼ばれた子供が、「この人は顎を出しているらしいよ」と云った。
男は幹太郎に、「そうだよ」と云った。
「拾ったうえに、うどんの一杯ぐれえ、ふるまってくれるかもしれねえ」
「三公、喧嘩はよしとくれ」と、娘が云った。
「無礼なことを云うな」
幹太郎がどなった。長が「おじさんよしなよ」と叫んだ。それが幹太郎をもっと怒らせた。二十余日このかた屈辱に満ちた明け昏れと、いま飢えと寒さとで、みじめにちぢみあがっている自分の姿を思うと、その男の卑しい嘲弄がどうにもがまんできなかった。
――こいつ、と幹太郎は刀を抜いた。
娘が「三ちゃん」と叫び、男が怒号しながらとびあがった。幹太郎の足の下でどぶ板が割れ、彼は横ざまに転倒した。
なりわい
一
幹太郎は天床を眺めていた。
薄い古夜具にくるまって、仰向けに手足を伸ばしたまま、箱枕の当るところが、痛くなると、僅かに頭の位置を変えるほか、身動きもせずに、さっきからぼんやりと、天床を眺めていた。
「平手さん」
襖の向うで、低いしゃがれた声が云った。
お豊が眼をさましたのだろう、幹太郎は、「うん」