Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

ちゃやしらずものがたり

茶屋知らず物語

岡本 かの子

Read 茶屋知らず物語 (ちゃやしらずものがたり) by 岡本 かの子 (おかもとかのこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 3,346 characters · 7 screens

Aozora Bunko

元禄享保の頃、関西に法眼、円通という二禅僧がありました。いずれも黄檗宗の名僧独湛の嗣法の弟子で、性格も世離れしているところから互いは親友でありました。

法眼は学問があって律義の方、しかし其の律義さは余程、異っています。或る時、僧を伴れて劇場の前を通りました。侍僧は芝居を見たくて堪りません。そこで師匠の法眼が劇場の何たるかを知らないのに附け込んで、斯う言いました。

「老師、この建物の中には尊いものが沢山あるのでございます。一つお詣りしていらっしては如何です」

法眼は暫らく立佇って考えていましたが、手を振って言いました。

「今日は是非行かねばならん用事があるのだ。そうもして居られない。だが、そう聴いた以上は素通りもなるまい。せめて結縁のしるしなりと、どれ」

と言って木戸番の前へ行って合掌礼拝しました。

円通の方は無頓着、飄逸という方です、或る人が此の禅僧に書を頼んだ事がありました。

円通は興にまかせて流るるような草書を書いて与えました。受取った人は大悦び、美しい筆の運びに眼を細めましたが、さて何と書いてあるのか余りひどいくずし方で読めません。立戻って円通に訊いてみたところが、筆者自身の円通さえ読めないという始末。