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かつしかみやげ
荷風随筆集(上)
永井 荷風
Read 荷風随筆集(上) (かつしかみやげ) by 永井 荷風 (ながいかふう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 133,224 characters · 269 screens
あはれも深く、この時節より通ひ初むるは浮かれ浮かるる遊客ならで、身にしみじみと実のあるお方のよし、遊女あがりのさる人が申しき。
一葉が文の情調は柳浪の作中について見るも更に異る所がない。二家の作は全くその形式を異にしているのであるが、その情調の叙事詩的なることは同一である。『今戸心中』第一回の数行を見よ。
太空は一片の雲も宿めないが黒味わたッて、廿四日の月は未だ上らず、霊あるが如き星のきらめきは、仰げば身も冽るほどである。不夜城を誇顔の電気燈は、軒より下の物の影を往来へ投げておれど、霜枯三月の淋しさは免れず、大門から水道尻まで、茶屋の二階に甲走ッた声のさざめきも聞えぬ。
明後日が初酉の十一月八日、今年はやや温暖く小袖を三枚重襲るほどにもないが、夜が深けてはさすがに初冬の寒気が感じられる。
少時前報ッたのは、角海老の大時計の十二時である。京町には素見客の影も跡を絶ち、角町には夜を警めの鉄棒の音も聞える。里の市が流して行く笛の音が長く尻を引いて、張店にもやや雑談の途断れる時分となッた。
廊下には上草履の音がさびれ、台の物の遺骸を今室の外へ出している所もある。