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ふとん
蒲団
田山 花袋
Read 蒲団 (ふとん) by 田山 花袋 (たやまかたい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 44,870 characters · 90 screens
七
時雄はそれに気が附いて一層懊悩の度を増した。
野は秋も暮れて木枯の風が立った。裏の森の銀杏樹も黄葉して夕の空を美しく彩った。垣根道には反かえった落葉ががさがさと転がって行く。鵙の鳴音がけたたましく聞える。若い二人の恋が愈人目に余るようになったのはこの頃であった。時雄は監督上見るに見かねて、芳子を説勧めて、この一伍一什を故郷の父母に報ぜしめた。そして時雄もこの恋に関しての長い手紙を芳子の父に寄せた。この場合にも時雄は芳子の感謝の情を十分に贏ち得るように勉めた。時雄は心を欺いて、――悲壮なる犠牲と称して、この「恋の温情なる保護者」となった。
備中の山中から数通の手紙が来た。
七
その翌年の一月には、時雄は地理の用事で、上武の境なる利根河畔に出張していた。彼は昨年の年末からこの地に来ているので、家のこと――芳子のことが殊に心配になる。さりとて公務を如何ともすることが出来なかった。正月になって二日にちょっと帰京したが、その時は次男が歯を病んで、妻と芳子とが頻りにそれを介抱していた。妻に聞くと、芳子の恋は更に惑溺の度を加えた様子。大晦日の晩に、田中が生活のたつきを得ず、下宿に帰ることも出来ずに、終夜運転の電車に一夜を過したということ、余り頻繁に二人が往来するので、それをそれとなしに注意して芳子と口争いをしたということ