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うすこうばい

薄紅梅

泉 鏡花

Read 薄紅梅 (うすこうばい) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 61,133 characters · 122 screens

Aozora Bunko

「頼もう!」

人の気勢もない。

「頼もう。」

途端に奇なる声あり。

「ダカレケダカ、ダカレケダカ。」

その音、まことに不気味にして、化猫が、抱かれたい、抱かれたい、と天井裏で鳴くように聞える。坂下の酒屋の小僧なら、そのまま腰を抜かす処を、学海先生、杖の手に気を入れて、再び大音に、

「頼む。」

「ダカレケダカ、と云ってるじゃあないか。へん、野暮め。」

「頼もう。」

「そいつも、一つ、タカノコモコ、と願いたいよ。……何しろ、米八、仇吉の声じゃないな。彼女等には梅柳というのが春だ。夏やせをする質だから、今頃は出あるかねえ。」

「頼むと申す……」

「何ものだ。」

と、いきなり段の口へ、青天の雷神が倒めったように這身で大きな頭を出したのは、虎の皮でない、木綿越中の素裸――ちょっと今時の夫人、令嬢がたのために註しよう――唄に……

……どうすりゃ添われる縁じゃやら、じれったいね……

というのがある。――恋は思案のほか――という折紙附の格言がある。よってもって、自から称した、すなわちこれ、自劣亭思案外史である。大学中途の秀才にして、のぼせを下げる三分刈の巨頭は、入道の名に謳われ、かつは、硯友社の彦左衛門、と自から任じ、人も許して、夜討朝駆に寸分の油断のない、血気盛の早具足なのが、昼寝時の不意討に、蠅叩もとりあえず、ひたと向合った下土間の