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うすこうばい
薄紅梅
泉 鏡花
Read 薄紅梅 (うすこうばい) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 61,133 characters · 122 screens
お泊宿から、水道橋の方へ軒続きの長屋の中に、小さな貸本屋の店があって……お伽堂……びら同然の粗な額が掛けてある。
お伽堂――少々気になる。なぜというに、仕入ものの、おとしの浅い箱火鉢の前に、二十六七の、色白で、ぽっとりした……生際はちっと薄いが、桃色の手柄の丸髷で、何だか、はれぼったい、瞼をほんのりと、ほかほかする小春日の日当りに表を張って、客欲しそうに坐っているから。……
羽織も、着ものも、おさすりらしいが、柔ずくめで、前垂の膝も、しんなりと軟い。……その癖半襟を、頤で圧すばかり包ましく、胸の紐の結びめの深い陰から、色めく浅黄の背負上が流れたようにこぼれている。解けば濡れますが、はい、身はかたく緊めて包んで置きます、といった風容。……これを少々気にしたが悪いだろうか……お伽堂の店番を。
三
何、別に仔細はない。客引に使った中年増でもなければ、手軽な妾が世間体を繕っているのでもない。お伽堂というのは、この女房の名の、おときをちょっと訛ったので。――勿論亭主の好みである。
つい近頃、北陸の城下町から稼ぎに出て来た。商売往来の中でも、横町へそれた貸本屋だが、亭主が、いや、役人上りだから主人といおう、県庁に勤めた頃、一切猟具を用いず、むずと羽掻をしめて、年紀は娘にしていい、甘温、脆膏、胸白のこの