Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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ぐびじんそう

虞美人草

夏目 漱石

Read 虞美人草 (ぐびじんそう) by Natsume Sōseki (夏目 漱石) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 198,559 characters · 401 screens

Aozora Bunko

人物と山と同じくらいな大きさに描かれている間を、一筋の金泥が蜿蜒と縁まで這上る。形は甕のごとく、鉢が開いて、開いた頂が、がっくりと縮まると、丸い縁になる。向い合せの耳を潜る蔓には、ぎりぎりと渋を帯びた籐を巻きつけて手提の便を計る。

宗近の父さんは昨日どこの古道具屋からか、継のあるこの煙草盆を堀り出して来て、今朝から祥瑞だ、祥瑞だと騒いだ結果、灰を入れ、火を入れ、しきりに煙草を吸っている。

ところへ入口の唐紙をさらりと開けて、宗近君が例のごとく活溌に這入って来る。父は煙草盆から眼を離した。見ると忰は親譲りの背広をだぶだぶに着て、カシミヤの靴足袋だけに、大なる通をきめている。

「どこぞへ行くかね」

「行くんじゃない、今帰ったところです。――ああ暑い。今日はよっぽど暑いですね」

「家にいると、そうでもない。御前はむやみに急ぐから暑いんだ。もう少し落ちついて歩いたらどうだ」

「充分落ちついているつもりなんだが、そう見えないかな。弱るな。――やあ、とうとう煙草盆へ火を入れましたね。なるほど」

「どうだ祥瑞は」

「何だか酒甕のようですね」

「なに煙草盆さ。御前達が何だかだって笑うが、こうやって灰を入れて見るとやっぱり煙草盆らしいだろう」