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みつのあわれ
蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (みつのあわれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,662 characters · 174 screens
人間なんて生れてから死ぬまで、嘘の吐き合いをしているようなもんだ。」
「死んでいても、まだ嘘をついているかも知れないさ。嘘ほど面白いものはない、」
「じゃ、勝手に嘘をついていらっしゃい。あたい、おじさまってもっと女のこころが判る方だと思っていたら、ちっとも、判っていない方なのね、こまかい事なんかまるで判っていない、……」
「女のこころが判るものか、判らないから小説を書いたり映画を作ったりしているんだ、だが、ぎりぎりまで行ってもやはり判っていない、判ることはおきまりの文句でそれを積みかさねているだけなんだ。」
「もうそんなお話、聴きたくないわ、何時でも同じ事ばかり仰有っている、よく飽かないで言えるわね。」
「言ったことを何時も繰り返して言っては、人間は生きているんだ。」
「あら、誰かがあたいを呼んでいるんじゃないか知ら、黙っていて、ほらね、聴えるでしょう、おばさまが呼んでいるのよ、おじさまにはあのお声が聴えないの。」
「誰の声もしてはいないじゃないか、金魚の空耳という奴だよ。」
「いいえ、すぐ門のわきにいらっしゃるんだけれど、それにしては遠い声だわね、ほら、また、きれいな声で呼んでいる。