Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

みつのあわれ

蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ

室生 犀星

Read 蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (みつのあわれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,662 characters · 174 screens

Aozora Bunko

」

「でも、よく、ひとりでくるまを見附けて乗ったね。」

「駆けずり廻ってやっと見附けたのよ、このくるま新聞社のでしょう。」

「送ってくれるんだ、家まで。」

「あたい、赤い旗の立っているくるまに乗るの初めてだわ、とても、勇ましいわね。」

「水を持っているね、水筒なんか提げて要心深くていい。」

「おじさま、お話したいことが沢山あるのよ、此方お向きになって。」

「むずかしい顔をして何を言い出すんだね、くたびれているから、少時、何も言わないでくれ。」

「大変な事があったのよ、くたびれたでは済まないわよ、きょうね、あたいの横に坐っている方がいてね、顔色があお白いんだか白いんだか判らないくらい、乳のような色をしている方がいらっしったの、うつ向いて講演を聴いていらっしゃるのよ、おじさまに顔を見られはしないかと、そればかり気にしているような方なのよ。」

「演壇からは人の顔なんか、暗くて見えはしないよ。」

「そのうちその方がきゅうに酷そうに、呼吸困難みたいになっちゃって、あたい、吃驚して水をあげたのよ、そしたら落ち着いて、ふうと呼吸もふだんのままになって来たのよ。」

「よく気がついたな、心臓が悪い人らしいね。