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みつのあわれ
蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (みつのあわれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,662 characters · 174 screens
三、日はみじかく
」
「おじさま、また汗とあぶらが先刻みたいに、額ににじみ出たわよ、」
「黙っていろ、何か聴える。」
「おばさまの声だわね、うなっていらっしゃるようね、水の中からかしら、それとも、……」
三、日はみじかく
「あたいね、先刻から考えていたんだけれど、こんな立派な入歯をお嵌れになっても、おじさまは、お年だから間もなく死ぬでしょう。」
「そりゃ死ぬね、黄金の入歯だって何にもなりはしないよ、けど、これで何でも噛めるから至極安楽だね。」
「歯齦の作りがみんな黄金でしょう、一体、どれだけ目方があるか知ら。」
「何匁あるものかな、何故、そんな事を聞き出すんだ、極り悪そうにしてさ。」
「おじさまが死んじゃったら、誰が一等先に入歯を取っちゃうか知ら。」
「誰だか判らないな、或いはきみかな、きみは、黄金をほしがっているんじゃないか。」
「あ、当っちゃった、あたい、おじさまがお亡くなりになったら、それ、誰よりも先に戴くわよ、それで耳輪と指環とをこさえるの、いまからお約束して置いてね、きっと、やると仰有って置いてよ。」
「やってもいいけれど、口の中に指を入れて入歯を外すときに、噛み附いて見せるから、それが怖くなかったら取るんだね。