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みつのあわれ
蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえどもやぶれかぶれ (みつのあわれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,662 characters · 174 screens
」
「ほんと、噛み附く気なの、だってお約束だからいいじゃないの。」
「その時の気分次第なんだよ、腹が立っていたら、指先をがにっと噛んでやる。」
「死んでいる人が噛み附くことなんか、ないじゃないの。」
「口だけ生きのこってやる。」
「ふふ、そしたらあたい、先におじさまの口の中に筆の穂をいれて、まだ、生きていらっしゃるかどうか、試して見てからにするわ、擽ったがらなかったら、直ぐ外すわ。」
「僕は擽ったくても、じっと我慢していて、指先が口の中にはいるのを待ちうけている。」
「いやよ、そんな意地悪するなんて、くださるものなら、あっさりとくださるものよ。」
「やるよ、死んでまで噛みつきはしない、ただ、そういって見たかっただけだ。」
「先刻からのお話をみんな聞いていて、ボックスにいる方、笑っていらっしってよ、でも、あの方、おじさまの顔とあたいの顔とを見くらべていて、どんな間柄だかを読んでいるみたいね、あの眼どうでしょう、些っとも、智恵のまじっていない眼の美しさだわね。」
「利いたふうなことをいうね、ああいう眼をしている人は、も一つ奥の方に別の眼を持っていて、それが何でも見とどけているかわりに、表側の眼はいつも留守みたいに美しく見えるんだよ。