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われはうたえども やぶれかぶれ
蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ (われはうたえども やぶれかぶれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,726 characters · 90 screens
人間はそんな急激な感動につきものの、そのゆとりのある短かい時間に邂逅することがあるものだ。宇野浩二が亡くなったことはとうに知っていたが、このように、ああ、と、いきなり書き立てられたものでは、もはや、ああ宇野浩二君と読んだだけで悲報は一杯につまって打つかって来るのである。キミハユキ、ワレハヤム、という打電だけで私は平常親友とまでゆかない間柄なのに、急速に宇野浩二に近づいていったのは宇野がもう生きていないことが、もとになっていた。生きていた人が死ぬことの魅力のつよさは、さすがに死というものの人一人に就いては、えがたい最後に生きたしめくくりのようなものであったからだ。
宇野浩二は近頃になって私を何となくヒイキにしてくれていた。優しい葉書を寄越してその内あの本のことも書くつもりだといい、同じ作家でも出しゃ張りの劣作ばかり叩きつけている私に、少しのこだわりや邪魔気を見せずによくやっているという、もっともふかい親しみを見せてくれていた。だからそれの嬉しさに千疋屋の前を通り葡萄を買って送ったりして、私は病友によいことをしたという晴れ気を持ったくらいであった。会合の席などでは飛びついて話をしてくれる人ではなく、間を置いてじらせるような気分の後で、短かい文学上の話をちょっとする人であった。