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われはうたえども やぶれかぶれ
蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ
室生 犀星
Read 蜜のあわれ・われはうたえども やぶれかぶれ (われはうたえども やぶれかぶれ) by 室生 犀星 (むろうさいせい) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,726 characters · 90 screens
寧ろ邪魔気で、あってもなくても宜いという虐待気味の、ふだんの扱いようになれて男はみんな打棄らかし放題であった。少年の時分に友達と列んでこれを手のひらの上に大切そうに載せ、ふしぎを蒐めているくせに平凡な、此の中にある玉にふれることの怖さを何時の間にかおぼえていた原始観念が、成長と一しょに薄れてしまい、ついにわすられいまは今夜のように、ひえて石ころのようになっていた。手のひらのあたたかさが玉の深部に脈を打ってつたわり、手のひらは鉄片か石ころを掴んだときの冷えを感じていた。併し私はこの者はつねに冷えていてもよいものではないか、寧ろ冷蔵庫入りの物ではないかと戯談にそう思ったりして、若し冷蔵庫入りの物だとしたら余りあたためていては、却って毒ではないかと、一人でからからと笑って見た。午前二時の私の感想はふたたび人間はどうにもならないと、自分のからだから笑う材料を引き出すものに思った。
うとうとすると、私はまた足袋をはき、着物をととのえて寝所をはなれて書斎の中でこれを行うべく用意にかかった。二個のしびんに代るがわる立ち対い、跼んだり立ったりしてみたが、がんとして尿の通りがなかった。