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ちまんだらしちょうぶし
血曼陀羅紙帳武士
国枝 史郎
Read 血曼陀羅紙帳武士 (ちまんだらしちょうぶし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,970 characters · 176 screens
「案外もろいものだねえ」
草で匕首の血糊を拭った時、
「お浦殿、やりましたな」
という声が聞こえて来た。さすがにお浦もギョッとして、声の来た方を見た。竹藪を背にして、編笠をかむった武士が立っていた。
「どなた?」
「旅の者じゃ」
「見ていたね」
「さよう」
「突き出す気かえ」
「役人ではない」
「話せそうね」
と、お浦は、構えていた匕首を下ろし、
「見遁がしてくれるのね」
「殺して至当の悪漢じゃ」
「ご存知?」
「賭場で見ていた」
「まあ」
お浦の恋情
「昼の間、五郎蔵殿の賭場へ参った者じゃ」
「あれ、それじゃア、まんざら見ず知らずの仲じゃアないのね」
「それに、同宿の誼みもある」
「同宿?」
「拙者は、府中の武蔵屋に泊まっておる」
編笠の武士、すなわち、伊東頼母は、そう、今日、府中へ来ると、五郎蔵一家が、武蔵屋へ宿を取っていると聞き、近寄る便宜にもと、同じ旅籠へ投じたのであった。しかるに、五郎蔵はじめその一家が、もう賭場へ出張ったと聞き、自分も賭場へ出かけて行ったのであった。
「まあ。武蔵屋に。それはそれは。妾も、武蔵屋の婢女でござんす」
「賭場で、典膳という奴、五郎蔵殿へ因縁つけたのを見ていた。