Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
まちはふるさと
街はふるさと
Read 街はふるさと (まちはふるさと) by Sakaguchi Ango (坂口 安吾) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 193,435 characters · 389 screens
池の蛙に二百万両かさねえかな」
青木はヤケ気味に、相手を小馬鹿にした風であった。長平は返事をしなかった。
「そうだろうな。蛙の顔には小便ときまってらア。小判を投げちゃアくれねえな」
青木は茶室の隅に水道の蛇口のあるのを認めて、ウガイをして顔を洗った。
「失恋? ふざけちゃ、いけませんや。女房に逃げられたって? チェッ。埒もない。お金か! 笑わせるよ。まったく。梶せつ子がオレの何者だって? 知ったことか! ねえ。そうだろう。お金も、女も、つまらないね。ツラツラ観ずれば、そうなんだ。わきまえてるんだよ。わたしは」
しかし顔色をひきしめて、
「だが、長平さんや。さッきのセリフにはたしかに、曰くがあるね。そうだろう。それを聞かせてもらいましょう。蛙の横ッ面に石が当ったんだとさ。白いアゴをつきだして、ひっくりかえるだけが能じゃないんだってさ。池の蛙でもさ。さ、おききしましょう」
ひらき直った凄味はなかった。言葉のとぎれ目から、身のこなしの節々から、内心の苦悩が、傷口からの血のように、ふきでている。
長平は無関心に、
「ぼくはね。今夜、梶せつ子に会うよ。まったく、池の中へ石を投げているのだろうよ」