Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
Read 貧しき人々の群 (まずしきひとびとのむれ) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 59,959 characters · 118 screens
アルコール中毒のようになっているので、手はいつでも震え顔中の筋肉が皆、顎の方へ流れて来たような表情をしている。
酔うと気が大きくなって、殿様にでもなったように騒ぐけれども、白面(しらふ)のときはまるで馬鹿のように、意気地がなくなって、自分より二十近く年下の後妻に、おとなしく使われているので、皆の物笑いになっている。
その彼が、祖母が墓参に行った留守へ来たのである。
大の男がたった五円の金を貰おうとして、幾度お辞儀をし、哀れみを乞うたことか!
彼は、命にかけてお願いするとか、御恩は一生忘れないとか、それはそれは歯の浮くように人を持ちあげた口吻で、
「お嬢様のおためにゃあ火水も厭いましねえ、はい、そりゃほんのことでござりやす」
と繰返し繰返し云った。
生れて初めて直接に金を借りようとする者の、極端に己れを低めた言葉態度を見た私は、妙な極り悪さと、自分自身の滑稽らしさとに苦しめられたのである。
愚にもつかない讃辞を呈せられたり、おだてられたりするのを、別にどうしようでもなく、どうしよう力もなく、聞いてすました様子をしている、こんな小っぽけな一文なしの私は、それを知っていて見たらどんなにみっともなくもまた、馬鹿らしく見えたことであろう。