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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

Read 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 20,146 characters · 40 screens

Aozora Bunko

ちらしていた、そのため危うくおゆみの手にかかろうとしたのであるが、去定は小言も云わず、彼のするままにさせていたし、おゆみとのあやまちから救い出したうえ、その汚辱に満ちた出来事を、(森半太夫だけはべつとして)誰にも知れないように葬ってくれた。

――あれが自分の立直る機会だった。

あの汚辱が自分を立直らせたのであり、そのときまで黙っていてくれた、去定のひろい気持が柱になったのだ、と登は思った。おれは盗みをしたことがある、友を売り、師を裏切ったこともある、と去定はいつか云った。その言葉が、現実にどれほどの意味をもっているかわからないけれども、登を立直らせた辛抱づよさや、貧しい人たちに対する、殆んど限度のない愛情を見ると、自分の犯した行為のために贖罪をしている、というふうにさえ感じられるのであった。

――罪を知らぬ者だけが人を裁く。

登は心の中でそう云う声を聞いた。

――罪を知った者は決して人を裁かない。

どういう事があったかは知らないが、先生は罪の暗さと重さを知っているのだ、と登は思った。食事が終ったあと、登は二人だけで話したいことがあると云って、まさをを自分の居間へ呼んだ。