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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
Read 赤ひげ診療譚 (あかひげしんりょうたん) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 20,146 characters · 40 screens
「話に穂を継ぐようですが」と登は静かに訊き返した、「こんど津川を呼び戻されたのも、そういう御思案から出たことですか」
「どうして津川のことなど引合いに出すのだ」
「お考えがうかがいたいからです」
「おまえまでがおれにどならせたいのか」
「たぶんそうなるだろうと思います」と登は冷静に云った、「津川をお呼びになる必要はありません、私はここにとどまるつもりですから」
去定は眼を細めた、「――誰が許した」
「先生です」
「おれが、おれがそれを許したか」
「お許しになりました」
「だめだ、おれは許さぬ」去定は首を振った、「保本登は目見医にあがる、それはもうきまっていることだ」
「この養生所にこそ、もっとも医者らしい医者が必要だ、――初めに先生はそう云われました」と登はねばり強く云った、「私もまたここの生活で、医が仁術であるということを」
「なにを云うか」と去定がいきなり、烈しい声で遮った、「医が仁術だと」そうひらき直ったが、自分の激昂していることに気づいたのだろう、大きく呼吸をして声をしずめた、「――医が仁術だなどというのは、金儲けめあての藪医者、門戸を飾って薬礼稼ぎを専門にする、似而非医者どものたわ言だ、かれらが不当に儲けることを隠蔽するために使うたわ言だ」