Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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みちくさ

道草

夏目 漱石

Read 道草 (みちくさ) by Natsume Sōseki (夏目 漱石) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 145,812 characters · 293 screens

Aozora Bunko

女房の喘息などはどうなっても構わないといった風のその調子が、如何にもこの男の特性をよく現わしていた。「本当に手前勝手な人だ」とみんなからいわれるだけあって、彼はこの場合にも、自分の都合より外に何にも考えていないように見えた。

「今行きますよ」

長太郎も少し癪だと見えて、なかなか茶の間から出て来なかった。

「重湯でも少し飲んだら好いでしょう。厭? でもそう何にも食べなくっちゃ身体が疲れるだけだから」

姉が息苦しくって、受答えが出来かねるので、脊中を撫っていた女が一口ごとに適宜な挨拶をした。平生健三よりは親しくその宅へ出入する兄は、見馴れないこの女とも近付と見えた。そのせいか彼らの応対は容易に尽きなかった。

比田はぷりっと膨れていた。朝起きて顔を洗う時のように、両手で黒い顔をごしごし擦った。しまいに健三の方を向いて、小さな声でこんな事をいった。

「健ちゃんあれだから困るんですよ。口ばかり多くってね。こっちも手がないから仕方なしに頼むんだが」

比田の非難は明らかに健三の見知らない女の上に投げ掛けられた。

「何ですあの人は」

「そら梳手の御勢ですよ。昔し健ちゃんの遊びに来る時分、よくいたじゃありませんか、宅に」