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みちづれ
道連
豊島 与志雄
Read 道連 (みちづれ) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 18,366 characters · 37 screens
そのうちに遠くから、ごーっと堰の水音が聞えてきた。初めは何の音だか分らなかったが、近づくにつれて愈々それだとはっきりすると、変に僕はぞーと寒気を感じた。独りでに足が重くなって早く歩けなかった、がらがらがらがら、すぐ後に空車の音がやってくる。
堰の近くになった時、其処は田圃より少し小高い道になっていたが、ふいに空車の音が止んだ。はてな、と思って振向くと、男は片手で車の柄を支え、片手で着物の前をめくって、提灯のかすかな光にも白くはっきりと分るほどに、勢よくしゃあーと飛していた。僕は一寸呆気にとられたが、自分でも何だか用を足したくなって、道端から側の低い田圃の方へ、同じく勢よくやっつけてやった。
用を足してしまって、不思議にもその男へ一寸親しみを持ちかけて、心持ちに足を止めてると、男は頬骨の張った赤黒い顔に――僕はその時初めて彼の顔を見たのであるが――人なつっこい和らぎを浮べて、がらがらと足早に追っついてきた。
「見馴れねえ人だと思って用心していただが、わしの考え違えだった。」
いきなりそう云いかけて、わけを話してくれた。――そこの堰で、身を投げるか落ちこむかして死んだ若い旅人があった。