Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

とおののきぶん

遠野の奇聞

泉 鏡花

Read 遠野の奇聞 (とおののきぶん) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,768 characters · 10 screens

Aozora Bunko

山口の村に近き二ツ石山は岩山なり、ある雨の日、小学校より帰る子どもこの山を見るに、処々の岩の上にお犬うずくまりてあり。やがて首を下より押上ぐるようにしてかわるがわる吠えたり。正面より見れば生れ立ての馬の子ほどに見ゆ、後から見れば存外小さしと云えり。お犬のうなる声ほど物凄く恐しきものなし。

実にこそ恐しきはお犬の経立ちなるかな。われら、経立なる言葉の何の意なるやを解せずといえども、その音の響、言知らず、もの凄まじ。多分はここに言える、首を下より押上るようにして吠ゆる時の事ならん。雨の日とあり、岩山の岩の上とあり。学校がえりの子どもが見たりとあるにて、目のあたりお犬の経立ちに逢う心地す。荒涼たる僻村の風情も文字の外にあらわれたり。岩のとげとげしきも見ゆ。雨も降るごとし。小児もびしょびしょと寂しく通る。天地この時、ただ黒雲の下に経立つ幾多馬の子ほどのお犬あり。一つずつかわるがわる吠ゆる声、可怪しき鐘の音のごとく響きて、威霊いわん方なし。

近頃とも言わず、狼は、木曾街道にもその権威を失いぬ。われら幼き時さえ、隣のおばさん物語りて――片山里にひとり寂しく棲む媼あり。