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ごうすけほうし
郷介法師
国枝 史郎
Read 郷介法師 (ごうすけほうし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,163 characters · 21 screens
「浮田の家来とあるからは、ちょうど幸い扶持して取らせ、其奴の口から敵状を聞こう」
最所治部はこう云った。で、郷介はその時から最所家の家来となったのである。
才気縦横の郷介は間もなく治部の寵臣となったが武道は精妙、弁舌は爽か、それに浮田家の内情は裏の裏まで知っていて、治部が尋ねれば声に応じて、城の要害、武具兵糧、兵の強弱、謀将の可否、どんな事でも物語るので、治部は遺憾なく相格を崩し、郷介を寵愛するのであった。
こうしていつか春も去り、やがて蒸し熱い夏となったが、その夏も去って秋となった。郷介が治部に随身してから六月の月日が経ったのである。
或日治部は家来を率いて、馬場で馬術の調練をした。
「郷介」と治部は声を掛けた。
「其方馬術は鍛練かな?」
「は、いささか仕ります」
岡郷介は微笑して云う。
「では、一鞍せめて見ろ」
「は」と云ったが気乗りせず、
「適当の逸物ござりましょうか?」
「馬か? 馬ならいくらもある」
「私、駻馬を好みます」
「荒馬がよいか。それは面白い。では月山に乗って見ろ」
「失礼ながら月山などは、私の眼から見ますると、弱気の病馬に過ぎません」
「ほほう左様か。