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かわぐちこ

野菊の墓他六篇

伊藤 左千夫

Read 野菊の墓他六篇 (かわぐちこ) by 伊藤 左千夫 (いとうさちお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 30,105 characters · 61 screens

Aozora Bunko

翌日は姉夫婦と予らと五人つれ立って父の墓参をした。母の石塔の左側に父の墓はまだ新しい。母の初七日のおり境内へ記念に植えた松の木杉の木が、はや三尺あまりにのびた、父の三年忌には人の丈以上になるのであろう。畑の中に百姓屋めいた萱屋の寺はあわれにさびしい、せめて母の記念の松杉が堂の棟を隠すだけにのびたらばと思う。

姉がまず水をそそいで、皆がつぎつぎとそそぐ。線香と花とを五つに分けて母の石塔にまで捧げた。姉夫婦も無言である、予も無言である。

「お父さんわたいお祖父さん知ってるよ、腰のまがった人ねい」

「一昨年お祖父さんが家へきたときに、大きい銀貨一つずつもらったのをおぼえてるわ」

「お父さん、お祖父さんどうして死んだの」

「年をとったからだよ」

「年をとるとお父さんだれでも死ぬのかい」

「お父さん、お祖母さんもここにいるの」

「そうだ」

予は思わずそう邪険にいって帰途につく。兄夫婦も予もなお無言でおれば、子どもらはわけもわからずながら人々の前をかねるのか、ふたりは話しながらもひそひそと語り合ってる。

去年母の三年忌で、石塔を立て、父の名も朱字に彫りつけた、それも父の希望であって、どうせ立てるならばおれの生きてるうちにとのことであったが、いよいよでき上がって供養をしたときに、杖を力に腰をのばして石塔に向かった父はいかにも元気