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きんどけい
金時計
泉 鏡花
Read 金時計 (きんどけい) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,568 characters · 12 screens
怪しからん、どこでお拾いなすった。」と暴らかに詰れば、三郎少しも騒がず、
「そんなら掏摸が遺失たのでしょう。何しろ私は御門外の一町以内で拾って来ました。」
へいげんは大喝して、
「小僧、汝は掏摸だ。」
「そういう者が騙拐だ。」
「何を。」と眼を瞋して、はたと卓子を打てば、三郎は自若として、
「ちと仔細があって、貴下が人は知るまいと思っている事を、私はよく知っております。文明国の御方にも似合わない、名誉ということを御存じがありませんか。私はむしろ貴下の御為を思って計らうのですが、どうでございます。」
と朱唇大に気焔を吐けば、秘密のすでに露れたるに心着きて、一身の信用地に委せむことを恐るれども、守銭奴は意を決するあたわず。辞窮して、
「蒸暑い晩だ。」
とへいげんは窓に立寄りて海を望み、たちまち愕然として退りぬ。
「へいげん殺せッ。」
と叫ぶものあり。続いて起る吶喊の声。
月は中天にありて一条の金蛇波上に馳する処、ただ見る十数艘の漁船あり。篝を焚き、舷を鳴して、眼下近く漕ぎ寄せたり。こはこの風説早くも聞えて、赤髯奴の譎計に憤激せる草刈夥間が、三郎の吉左右を待つ間、示威運動を行うなり。