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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Read 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 10,085 characters · 21 screens
」
一言吐いて与惣次を見据え、太い低声で、
「与惣、丸坊主たあ化けたのう?」
「へ?」
「いやさ、富さん、卍の富、うまくやったぜ、おう。」
「旦那――。」
「待った! その旦那がよくねえ。真の与惣なら俺を知ってるはず、こうっ、素っ堅気じゃあるめえし皆さん俺を親分とこそ呼べ、旦那なんて糞面ひろくもねえ。えこう、種あ割れたんだ、富、年貢を納めろっ、野郎っ、どうだっ!」
「だ、だ、誰だ手前は?」
「唐天竺の馬の骨。」
「う――む。」
面色蒼褪めて富五郎、壁を背負って仁王立ち。
「卍の富五郎。」にやりと笑った藤吉、「釘抜だ、藤吉だ、神妙に頂戴するか。」
ぱっと昇った灰神楽、富五郎が蹴った煙草盆を逃げて跳り上った釘抜藤吉、足の開きがそのまま適ってお玉が池免許直伝は車返しの構え。
「洒落くせえ。」
「うぬ!」
どこに隠し持ったか、西京達磨の名ばかり正宗、富五郎の手にぎらり鞘を走る。
「抜いたな。」
「応さ。」
呼吸と呼吸、眼配りと眼配り――面倒と見た勘弁勘次、物を打つければ中間へ飛んで邪魔になるから、かねての心得、空拳を振って抛る真似、逆上っているから耐らない、卍の富五郎法を忘れて切ってかかる。