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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Read 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 15,998 characters · 32 screens
」
頬被りをしてわざと裏口から清水屋へはいって行った藤吉は、白痴のようにしょげ返っている伝二郎を風呂場の蔭まで呼び出して、優しくその肩へ手を置いた。
「慾から出たことたあ言い条、お前さんもとんだ災難だったのう。わしを記憶えていなさるか――あっしゃあ合点長屋の藤吉だ、いやさ、釘抜の藤吉ですよ。」
泪ながらに伝二郎の物語ったところも、甚八の話と大同小異だった。眼を光らせて藤吉は下唇を噛んで聞いていたが、今から思うと、あの最初の女ちぼと例のお露の幽霊とは、背恰好から首筋の具合いと言い、どうも同一人らしいという伝二郎の言葉に、何か図星が浮んだらしく、忙しそうに片手を振りながら、
「して、伝二郎さん、ここが大事なところだから、よっく気を落ちつけて返答なせえ。人間てやつあいい気なもんで、何か勝負ごとに血道を上げると、気取っていても普段の習癖を出すもんだが――お前さんはその玄内とかってお侍とたびたび碁を打ちなすったということだが、その時先方にみょうちきりんな仕草、まあ、いってみりゃあ、頭をかくとか、こう、そら、膝やら咽喉やらあちこち摘みやがるとか――。」
「あ!」
と伝二郎が大声を張り揚げた。