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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき
釘抜藤吉捕物覚書
林 不忘
Read 釘抜藤吉捕物覚書 (くぎぬきとうきちとりものおぼえがき) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 9,145 characters · 19 screens
」
「おう、親分え。」と、戸口で大声がした。
「彦か、いいところへ帰って来た。して首尾は?」
「なに、お前さん。」と吉原から帰って来た彦兵衛は、小気味よさそうに独特の微苦笑を洩らしながら言葉をつないだ。
「一文字の歌と栄太の野郎とは、馴染みどころか、二度を返したばかりの浅え仲だってまさあ。そんなことより耳寄りなのは、栄太の二の腕に――。」
「お銀命の刺青か。」
と藤吉が後を引き取った。
「えっ。」
と叫びながら影法師三吉は兎のように隅へ飛んで行って、めりめりと死骸の袖を破った。杵屋助三郎の腕は女のように白くて黒子一つなかった。
人々は愕然と顔を見合った。
「栄太とお銀で仕組んだ芝居だあな。お銀が戸外から夫の助三郎を突いた後で、栄太の野郎がはいり込んで、内部から全部戸締まりし、出刃に血を塗って捨てておいたり、煮え湯をかけてそっぽをむいたりしやがって、手前は天井からどろんをきめただけのことよ。まあ、あまり遠くへも草鞋は穿くめえ、三吉、犯人を挙げるのは手前の役徳、あっしゃあこれから海老床さ、へっへ。えれえおやかましゅうごぜえやした。皆さん、御免下せえやし。」
藤吉の尾につきながら勘弁勘次は、彦兵衛を返り見た。