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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,006 characters · 25 screens
四
それは二十二三の中年増で、色の浅黒い、目鼻立ちの整った申分のない美女が、横顔を見せて逃げるように立去ったのです。
「これはどうも、へッ、へッ、へッ」
ガラッ八はすっかり恐悦してしまいました。先刻門から入った痣の娘も、今の中年増もこの家の者だとすると、全く妙なところへ飛び込んでしまったことになります。
四
「八、近頃は火吹竹の稽古だそうだな」
平次は早くもそれを聴き込んだ様子でした。
「へッ、変なことになりましたよ、親分」
「何が変なんだ。その火吹竹の師匠には、綺麗な妹が二人もあるというじゃないか、さぞ八五郎の稽古も精が出ることだろう」
「そんなわけじゃありませんがね」
ガラッ八は照れ臭く耳の後ろばかり掻いております。
「尋常に申上げた方がいいぜ。また変なのに引っかかると、叔母さんの心配の種だから」
「そんな怪しげなのじゃありませんよ。間違いもなく大店の若隠居が、道楽に尺八の師匠をしているんで、竹名は竹斎というが、本名は山城屋滝三郎というんだそうですよ」
「山城屋滝三郎? 店はどこだ」
「大坂で」
「なんだ上方の衆か、上方訛りはあるかい」
「ありませんよ。江戸の水が恋しくって、弟に世帯を譲ってこっちへ来たというくらいだから」