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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,006 characters · 25 screens
「そいつは大変だ。なんだって滝三郎を縛らなかったんだ」
「丸橋忠弥の穴蔵から金を出して費った廉で縛るんですか、親分」
「馬鹿だなア、丸橋忠弥の道場はとうの昔に取潰して、床の下まで掘り返したはずだ。そんな穴蔵なんか残っているものか、そいつは盗み溜めた金に決っているじゃないか」
「盗み溜めた?」
「滝三郎という奴は、痣の熊吉か、その一味だよ。さア、案内しろ、俺が行ってみる」
「痣の熊吉は、左首筋に赤い痣のある小男でしょう。――滝三郎はホクロ一つない大男ですよ、親分」
「そんな事はどうだって都合が付くよ。こうしているうちに、ずらかったらどうするんだ。さア、来い、八」
「だって親分」
いつもは猟犬のように勇む八五郎が、二の足も三の足も踏むのは、お雪と多与里姉妹の平和な生活を驚かすに忍びなかったのです。
しかし、親分の平次が行くのを、八五郎は引止めようはありませんでした。
「辰、変りはないか」
お弓町に着くと、竹斎の家の前に、番犬のように頑張っている下っ引の辰に、平次は声を掛けました。
「何の変りもありませんよ、親分」
「出た者も入った者もないだろうな」
「ヘエ」
「さア、八、威勢よく叩くんだ。