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「かまとつち」こうじょうのリト・クルジョーク
「鎌と鎚」工場の文学研究会
宮本 百合子
Read 「鎌と鎚」工場の文学研究会 (「かまとつち」こうじょうのリト・クルジョーク) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 5,587 characters · 12 screens
よく驟雨が降った。並木道には水たまりが出来る。すぐあがった雨のあとは爽やかな青空だ。落葉のふきよせた水たまりに、逆さにその空がうつっている。――夕方、東京で云えば日本橋のようなクズニェツキー・モーストの安全地帯で電車を待った。
チン、チン、チン。
ベルを鳴らして疾走して来る電車はどれも満員だ。引け時だからたまらない。群衆をかきわけて飛び出した書類入鞄を抱え瘠せた赤髭の男が、雨外套の裾をひるがえして電車の踏段に片足かけ、必死になって
――入り給え! 入り給え!
とやっている。電車は男を外へはみ出させたまんま動き出した。赤髭の男は、断然自分の肩と意志の力で段の上へわり込んだ。
交叉点では、黒の裾長外套を着た巡査が、赤い棒を鼻の先に上げたり下げたりして交通整理をやってる。電車にぶら下って行くのを見つけられると、職業組合手帖を見せて、一留罰金をとられる。
数台まって、やっと乗りこんだ電車は行く先の関係で殆ど労働者専用車だ。鳥打帽をかぶり、半外套をひっかけた大きな体の連中が、二人分の座席に三人ずつ腰かけ、通路まで三重ぐらいに詰って、黙って、ミッシリ、ミッシリ押し合っている。