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に、さんば――じゅうに、さんば
鏡花短篇集
泉 鏡花
Read 鏡花短篇集 (に、さんば――じゅうに、さんば) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 33,305 characters · 66 screens
生豆腐の手掴に比べては、勿体ない御料理と思った。それにくれるのが優しげなお婆さん。
地が性に合うで好う出来るが、まだこの村でも初物じゃという、それを、空腹へ三つばかり頬張りました。熱い汁が下腹へ、たらたらと染みた処から、一睡して目が覚めると、きやきや痛み出して、やがて吐くやら、瀉すやら、尾籠なお話だが七顛八倒。能も生きていられた事と、今でも思うです。しかし、もうその時は、命の親の、優しい手に抱かれていました。世にも綺麗な娘で。
人心地もなく苦しんだ目が、幽に開いた時、初めて見た姿は、艶かな黒髪を、男のような髷に結んで、緋縮緬の襦袢を片肌脱いでいました。日が経って医王山へ花を採りに、私の手を曳いて、楼に朱の欄干のある、温泉宿を忍んで裏口から朝月夜に、田圃道へ出た時は、中形の浴衣に襦子の帯をしめて、鎌を一挺、手拭にくるんでいたです。その間に、白媼の内を、私を膝に抱いて出た時は、髷を唐輪のように結って、胸には玉を飾って、丁ど天女のような扮装をして、車を牛に曳かせたのに乗って、わいわいという群集の中を、通ったですが、村の者が交る交る高く傘を掛けて練ったですね。